こうすけの にしのみや日本酒学校(白鷹さんの巻)
有朋自遠方来。(論語 学而編より)
さぁ、いよいよ「にしのみや日本酒学校」の講義が始まります。第1回目の講義は白鷹禄水苑で行われます。隣にある白鷹さんの工場からモクモクと威勢よくはき出された蒸気が晩秋の澄み渡る空に溶けていきます。静かながらも空は、そして我が街の産業は、躍動しています。
禄水苑の中には美禄市というショップがあるのですが、まだ営業時間前なので暗く、そのため天井に組まれた黒い大きな柱はぼんやりと浮かび上がります。ちょっぴり幻想的な雰囲気を満喫して、教室である宮水ホールに向かいます。

第1回目の講義は白鷹禄水苑で行われます。
教室には抽選で選ばれた学友がおとなしく並んで着席しており、机に置かれた本日のレジュメに目を通したり予習に余念がありません。主催者の話によりますと、西は加古川、東は京都からの学生もおられるようで、「朋有り遠方より来たる」とはまさにこのことであります。

これが本日のレジュメ。
本日の白鷹さんの講義は「灘酒よもやま話」という学術的な香りのするタイトルであります。まずは時間割から、
10:00 開会
10:05 ビデオ上映
10:20 講義
11:10 休憩
11:20 試飲
12:00 閉会
主催者の挨拶などの後、先ずはビデオ上映です。
ビデオでは日本酒造りの様子や白鷹さんのこだわりなどが紹介されます。最新のハイテクノロジーを駆使しながらも、肝心要なところは人の仕事が生きており、日本酒は美であり心であるということを改めて学びます。

丹波杜氏の技。
ビデオの後は講義です。講師は白鷹さんの管理部長さんです。大学でも管理部長さんのようなインテリジェンスに溢れた雰囲気を醸し出す人は、概して冷たく眠たい講義をするものですが、管理部長さんの話は優しく丁寧なもので、ゆっくりじっくり灘酒よもやま話が続きます。
灘の酒造りが発展した要因としては、
・宮水の存在
・吉川町周辺での優良な酒米の栽培、後の山田錦の誕生
・丹波杜氏(高度な酒造り集団)
・水車精米による高精米
・樽廻船による江戸までの運搬
・六甲颪(おろし)
が挙げられ、灘、とりわけ西宮が自然や地形、周辺地域との関わりといったあらゆる面で絶好の場所だったことが分かります。宮水、酒米、丹波杜氏のことは詳しくはないものの知っておりましたが、水車精米とは初めて聴きます。つまり、六甲山を発した川は傾斜が急で、水車による精米が可能だったということです。
また、山田錦と一般米を実際に見比べたり、へぇ~。へぇ~。の連続です。

右は一般米。左が山田錦。山田錦は一般米の1.3倍の大きさがあります。
最後は酵母を培養するのに必要な酒母の話。人工の物を一切使わず、天然の菌だけで作られる酒母を生酛(きもと)というそうで、白鷹さんの酒の特徴は生酛にこだわっている点にあり、それがキレの良さを生むそうです。
さて、50分の講義が終わり休憩時間です。休憩時間中に席のレイアウト変更があるので、教室から出て一階のショップ等で休憩してくださいとのアナウンスがあります。
休憩が終わればムフフの試飲の時間があるので、その肴でも買おうかなとショップで吟味しますが、試飲をガッツリ楽しもうなどと考えるそんな不良生徒は私だけのようです。

肴は何にしようかな?
レイアウト変更も終わったようで、教室に戻るようにと声がかかります。教室に入ると。
ナ、ナ、ナント!?
ここは鹿鳴館か?玉姫殿か?
2列に整然と並べられた机には、日本酒に、酒の肴が豪華に鎮座しております。不良生徒がトイレでタバコを吸うがごとく、肴をポケットに忍ばせこっそり隠れて食べる必要はなかった訳であります。
さぁ、学生の愉しみ、給食ならぬ試飲の時間です。試飲にも関わらず何故か乾杯の発声のあと早速チビリ。酒は2種類用意されており、飲み比べができるようになっておりますが、正直私には違いが分かりません。飲めば飲むほど分からなくなります。まぁ、いいや。
同席には落ち着いた上品な母娘と思われる二人組。
こうすけ 「失礼ですが、お母様とお嬢様ですか?」
お母様 「えぇ。」
こうすけ 「親子で学ばれるとは健全なご家庭で。」
さすがに伊勢神宮の御料酒にも選ばれる西宮の誇りでもある銘酒で、すぐに人の心は朗らかになり、あちらこちらのテーブルで日本酒談義に花が咲きます。かくいう私こうすけも舌が滑らかになりまして、
こうすけ 「論語に『唯酒無量、不及乱』とありましてね、普通『唯(ただ)、酒に量無し、乱れるに及ばず』、つまり、酒は量を決めて飲んでいる訳ではないけれど、かといって乱れることはない。と解釈するんですよ。」
お母様・お嬢様 「はぁ。」
こうすけ 「一方、奇特な学説もあるようで、『及ばずと乱れる』と、酒が及ばない(足らない)と乱れる。と解釈する人もいるんですよ。この教室に乱れる人はおりますかな?」
お母様・お嬢様 「おほほっ。」
天下の銘酒はつまらない話にも寛容になる魔法をかけてくれるようです。

さぁ、いよいよ試飲の時間ですよ。
宴?もたけなわの頃、あと10分で閉会する旨告げられます。あちらこちらから「エ~ッ!」の声が。開会の頃の静かだった教室が遠い昔のようです。奇特な学説により足らないと人が乱れるとされるものは、酒の量だけでなく、時間も含まれるのかもしれません。
ただ、残った酒は持って帰って結構とのことで、学生諸君笑顔で下校時間となりました。
学校の帰り道、寄り道して宮水発祥の地を訪ねます。六甲山からの急斜面を通ってきた伏流水は酸素を多く含み、太古の昔、海だった地域から流れてくるミネラルを多く含む伏流水とがこの一帯で合わさり、宮水が湧きました。魔法の素があるとすればこの宮水もその一つに間違いなく、その発祥地の碑の前に立つと、ちょっぴりですが感動が湧いてきて酔いも覚めていきます。

宮水発祥地の石碑。
有朋至遠方帰。
寄り道を終えて札場筋に戻ると、ほんのり赤ら顔の下校中の学生の姿がちらほらと。その中には、試飲時間に絶好調だった模範的学生の姿もあります。全身全霊で学習したせいか、疲れ果てた様子で足元もふらりふらり。この学友がどこまで帰るのかは知らないですが、また来月、再び同じ学び舎に集い、共に学ぶのだと思えば、「亦楽しからずや」という論語の一節が頭に浮かんで、それもまた澄み渡る晩秋の空に溶けてゆくのです。
清酒造りに恵まれた環境の西宮は、人間にとっても素晴らしい環境なはず。
そんな西宮で暮らし、働いてみたいという朋はサクラナビをチエックだ!
http://n-cci.or.jp/sakuranavi/
さぁ、いよいよ「にしのみや日本酒学校」の講義が始まります。第1回目の講義は白鷹禄水苑で行われます。隣にある白鷹さんの工場からモクモクと威勢よくはき出された蒸気が晩秋の澄み渡る空に溶けていきます。静かながらも空は、そして我が街の産業は、躍動しています。
禄水苑の中には美禄市というショップがあるのですが、まだ営業時間前なので暗く、そのため天井に組まれた黒い大きな柱はぼんやりと浮かび上がります。ちょっぴり幻想的な雰囲気を満喫して、教室である宮水ホールに向かいます。

第1回目の講義は白鷹禄水苑で行われます。
教室には抽選で選ばれた学友がおとなしく並んで着席しており、机に置かれた本日のレジュメに目を通したり予習に余念がありません。主催者の話によりますと、西は加古川、東は京都からの学生もおられるようで、「朋有り遠方より来たる」とはまさにこのことであります。

これが本日のレジュメ。
本日の白鷹さんの講義は「灘酒よもやま話」という学術的な香りのするタイトルであります。まずは時間割から、
10:00 開会
10:05 ビデオ上映
10:20 講義
11:10 休憩
11:20 試飲
12:00 閉会
主催者の挨拶などの後、先ずはビデオ上映です。
ビデオでは日本酒造りの様子や白鷹さんのこだわりなどが紹介されます。最新のハイテクノロジーを駆使しながらも、肝心要なところは人の仕事が生きており、日本酒は美であり心であるということを改めて学びます。

丹波杜氏の技。
ビデオの後は講義です。講師は白鷹さんの管理部長さんです。大学でも管理部長さんのようなインテリジェンスに溢れた雰囲気を醸し出す人は、概して冷たく眠たい講義をするものですが、管理部長さんの話は優しく丁寧なもので、ゆっくりじっくり灘酒よもやま話が続きます。
灘の酒造りが発展した要因としては、
・宮水の存在
・吉川町周辺での優良な酒米の栽培、後の山田錦の誕生
・丹波杜氏(高度な酒造り集団)
・水車精米による高精米
・樽廻船による江戸までの運搬
・六甲颪(おろし)
が挙げられ、灘、とりわけ西宮が自然や地形、周辺地域との関わりといったあらゆる面で絶好の場所だったことが分かります。宮水、酒米、丹波杜氏のことは詳しくはないものの知っておりましたが、水車精米とは初めて聴きます。つまり、六甲山を発した川は傾斜が急で、水車による精米が可能だったということです。
また、山田錦と一般米を実際に見比べたり、へぇ~。へぇ~。の連続です。

右は一般米。左が山田錦。山田錦は一般米の1.3倍の大きさがあります。
最後は酵母を培養するのに必要な酒母の話。人工の物を一切使わず、天然の菌だけで作られる酒母を生酛(きもと)というそうで、白鷹さんの酒の特徴は生酛にこだわっている点にあり、それがキレの良さを生むそうです。
さて、50分の講義が終わり休憩時間です。休憩時間中に席のレイアウト変更があるので、教室から出て一階のショップ等で休憩してくださいとのアナウンスがあります。
休憩が終わればムフフの試飲の時間があるので、その肴でも買おうかなとショップで吟味しますが、試飲をガッツリ楽しもうなどと考えるそんな不良生徒は私だけのようです。

肴は何にしようかな?
レイアウト変更も終わったようで、教室に戻るようにと声がかかります。教室に入ると。
ナ、ナ、ナント!?
ここは鹿鳴館か?玉姫殿か?
2列に整然と並べられた机には、日本酒に、酒の肴が豪華に鎮座しております。不良生徒がトイレでタバコを吸うがごとく、肴をポケットに忍ばせこっそり隠れて食べる必要はなかった訳であります。
さぁ、学生の愉しみ、給食ならぬ試飲の時間です。試飲にも関わらず何故か乾杯の発声のあと早速チビリ。酒は2種類用意されており、飲み比べができるようになっておりますが、正直私には違いが分かりません。飲めば飲むほど分からなくなります。まぁ、いいや。
同席には落ち着いた上品な母娘と思われる二人組。
こうすけ 「失礼ですが、お母様とお嬢様ですか?」
お母様 「えぇ。」
こうすけ 「親子で学ばれるとは健全なご家庭で。」
さすがに伊勢神宮の御料酒にも選ばれる西宮の誇りでもある銘酒で、すぐに人の心は朗らかになり、あちらこちらのテーブルで日本酒談義に花が咲きます。かくいう私こうすけも舌が滑らかになりまして、
こうすけ 「論語に『唯酒無量、不及乱』とありましてね、普通『唯(ただ)、酒に量無し、乱れるに及ばず』、つまり、酒は量を決めて飲んでいる訳ではないけれど、かといって乱れることはない。と解釈するんですよ。」
お母様・お嬢様 「はぁ。」
こうすけ 「一方、奇特な学説もあるようで、『及ばずと乱れる』と、酒が及ばない(足らない)と乱れる。と解釈する人もいるんですよ。この教室に乱れる人はおりますかな?」
お母様・お嬢様 「おほほっ。」
天下の銘酒はつまらない話にも寛容になる魔法をかけてくれるようです。

さぁ、いよいよ試飲の時間ですよ。
宴?もたけなわの頃、あと10分で閉会する旨告げられます。あちらこちらから「エ~ッ!」の声が。開会の頃の静かだった教室が遠い昔のようです。奇特な学説により足らないと人が乱れるとされるものは、酒の量だけでなく、時間も含まれるのかもしれません。
ただ、残った酒は持って帰って結構とのことで、学生諸君笑顔で下校時間となりました。
学校の帰り道、寄り道して宮水発祥の地を訪ねます。六甲山からの急斜面を通ってきた伏流水は酸素を多く含み、太古の昔、海だった地域から流れてくるミネラルを多く含む伏流水とがこの一帯で合わさり、宮水が湧きました。魔法の素があるとすればこの宮水もその一つに間違いなく、その発祥地の碑の前に立つと、ちょっぴりですが感動が湧いてきて酔いも覚めていきます。

宮水発祥地の石碑。
有朋至遠方帰。
寄り道を終えて札場筋に戻ると、ほんのり赤ら顔の下校中の学生の姿がちらほらと。その中には、試飲時間に絶好調だった模範的学生の姿もあります。全身全霊で学習したせいか、疲れ果てた様子で足元もふらりふらり。この学友がどこまで帰るのかは知らないですが、また来月、再び同じ学び舎に集い、共に学ぶのだと思えば、「亦楽しからずや」という論語の一節が頭に浮かんで、それもまた澄み渡る晩秋の空に溶けてゆくのです。
清酒造りに恵まれた環境の西宮は、人間にとっても素晴らしい環境なはず。
そんな西宮で暮らし、働いてみたいという朋はサクラナビをチエックだ!
http://n-cci.or.jp/sakuranavi/
by nishinomiyacci
| 2015-11-23 17:46